愛情オーバードーズ

ただのひとりごと零し

アダルトチルドレン、再び

 

「お姉ちゃん、大事な話があるから電話していい?」

 

普段は連絡を取らない妹からLINEが来た。あらたまった様子で言われるのはもう確定演出すぎるだろ。

 

「あのね、〇〇さんが亡くなったの」

80を過ぎた祖父母の心配をしていたが、まさかの母親の婚約者だった。

 

どうしよう、言葉が出てこない。電話を出たはいいものの、頭が真っ白になった。「とりあえず……ママは?」

 

「あのね、泣き崩れちゃって」――そりゃそうだ

「やばいかもしれない」――思った通りだ

 

普段は避けていた家族の問題が、いきなり目の前に現れた。「とりあえず明日そっち行くわ」「お姉ちゃん、お願い。あたしも行くけど、今回はお願い。」

 

翌日の昼に駆け付けると、母親はずっと泣いていた。2か月ぶりに見たはずなのに、別人だと感じるくらいにはやつれていた。

 

その日は母親代わりの電話対応などを含め、ずっと母親につきっきりだった。仕事をしなくてはいけない、締め切りが迫っている、そんなことを言ってられない状況になってしまった。

 

今の状況は、アダルトチルドレンには1番辛い状況だと思う。アダルトチルドレンとは、幼少期に家庭内トラウマによって傷つき、大人になった人のこと。また親に振り回されなくてはいけないのか。

 

もちろん、私もその婚約者とは関わっていたし、母親の幸せそうな姿も見ていたし、ショックを受けている。近しい人が亡くなるというのは、こんなにも悲しいことなのかと。

 

だが「お願い、1人にしないで」と泣きながらしがみつく母親をずっとなぐさめ、様子をうかがっていないといけないというのは、もっと苦しい。私が油断すると、後追い自殺をしてしまうかもしれない。もう1人の命を、母親の命を、今度は私がうばってしまうかもしれない。緊迫感のあるなかで母親の様子を伺わなくてはいけない。私や妹の負担も大きい。

 

というか、母親ってこんなにシワシワだったっけ。こんなに細かったっけ。私が想像していた母親の顔よりも、ずいぶんと老けていた。あのトラウマを抱えて苦しみもがいていた10代の私から、こんなに時が流れてしまったのかとふと考える。

 

もう私は大人になった。まだ苦しみもがいているが、乗り越えなくてはいけない壁だとちゃんと理解している。なんとか、なんとかここを乗り越えていかなくては。